天井の「野縁」の形状を生かして、遊び心ある空間づくりへとリノベーションした野縁の家。(詳しくはこちら→WORKS「野縁の家」)
こちらのような戸建て住宅のリノベーションで重要なのは、間取りやデザインだけではありません。構造面の補強もしっかりと行い、安心して住みつづけられる家をつくることも大切です。
今回は「野縁の家」で行った、現場調査・プラン提案・補強工事について詳しくご紹介したいと思います。戸建てリノベを検討中の方は、ぜひ参考にされてください。
まずは「現場調査」でわかることを調べます
リノベーションのご依頼を受けたら、いまの住まいと暮らしを見学させていただくところからスタートします。
・家の外側から、基礎の状態を見る
・床を開けて、内側の基礎・根太の状態を見る
・点検口をのぞき、天井裏の躯体の状態を確認する
この時点で確認できることはわずかですが、生活に支障のない範囲でチェック。
シロアリ被害はないだろうか?そもそもリノベーションは可能だろうか?など検証します。
このとき壁に囲まれてしまっている柱や床の大部分は確認できず、解体するまでは正確な補強方法がわかりません。そのためリノベーションにおいて、工事の正確な金額がわかる「本見積もり」は解体後となります。
リノベーションのプランをご提案します
リノベーションのプランを立てるために必要なのが、いまの住まいの図面です。
先ほど「壁に囲まれた柱は見えない」と言いましたが、実は見えなくてもおおよその位置を割り出すことはできます。日本の木造家屋は「尺貫法」という決まった寸法間隔で建てられているので、壁の位置から柱の位置を予測できるんです。
いまの住まいの図面ができたら、リノベーションの計画図面を作成します。
図面や模型を使いながら、何度か打ち合わせをさせていただきます。ご納得いただければいよいよ工事契約をするために、住まいの解体へと移ります。
住まいを解体して補強箇所を確認します
住まいの解体がスタート!柱などの構造体には傷をつけず、壁の仕上げをはがします。すると現場調査のときには隠れていた、年季の入った軸組が見えてきました。
ここで現場に入っていただくのが「構造設計士」という構造のエキスパート。どの部分に補強が必要になるか確認していきます。
野縁の家では、次のような耐震補強が必要でした。
1.無筋基礎を補強する(抱き基礎)
野縁の家の基礎は、昔の建築物ではよくある「鉄筋の入っていない基礎」でした。
基礎は建物を支える大切な部分。このまま大きな力が加わると、倒壊してしまう危険もあります。
いまの基礎に鉄筋は入れられないので、採用するのは「抱き基礎」という方法。既存基礎を抱くように鉄筋を配筋して、その上からコンクリートを打設して一体化させます。
2.腐った柱を補強する(継ぎ手)
壁をはがしてみると、ちょっとした雨漏りや経年劣化で、柱が腐っていることがあります。野縁の家でも、柱の一部がダメになってしまっていました。
ところが柱を丸々一本交換すると、コストがかかりすぎてしまいます。そこで採用されるのが「継ぎ手」。腐った部分だけ取り除いて、新しい柱を継ぎ足すという手法です。
まるで、もともと一本の柱であったかのように、二本の木材がぴったりつながります。これは大工さんの高い技術力があるからこそできることです。
3.梁を補強する
天井と屋根をはがしてみると、見えてくるのが「梁」です。野縁の家をチェックしたところ、梁がうまくつながっていない部分がありました。
このままだと力がまっすぐに流れず、倒壊の危険があります。そこで力が流れやすくなるように新たな梁を入れ、さらに梁を厚くしました。
これで耐久性を高めつつ、広々とした空間をつくりあげることができます。
リノベーションで古い建物を「宝の山」に
これまでの日本の建築は「スクラップ&ビルド」が当たり前。どんどん新しい建物をつくっては壊し、つくっては壊し……を繰り返してきました。
しかし今回の野縁の家のように、適切な補強をすればまだまだ使える建築物はたくさんあります。古い建物も空き家も、リノベーションで「宝の山」となり得るのです。
みなさんのまわりにも、使われずに余っている古い建物はないでしょうか?その建物を安心安全で遊び心ある建物へと変化させてみませんか?
“KITI”にするリノベ(野縁の家編)、次回はこだわりの内装についてお話しできればと思います。