美しいデザインと住みやすさを両立させる住まいづくり空間には、細部へのこだわりが欠かせません。建具は、内装に調和しながらも機能性を追求し、住まいに新たな魅力をもたらしてくれます。今回は、KITIが手がけた建具デザインと、美しい住まいを作るための具体的な技法や考え方をご紹介しましょう。
余分な線を省き、美しく見せる引き戸
まずご紹介するのは、ワンルーム+寝室のリノベーション事例です。室内の引き戸・開き戸のディテールにこだわり、内装や家具類になじむシンプルで美しいデザインを心がけました。
こちらはウォークインクローゼット前の引き戸。ドア上部と天井の間に空間があるため、建具もそれに合わせた高さでつくり、余分な線を減らすように。ドアを閉めると壁と一体化して、すっきりと見せることができます。
既製品の建具だと通常25mmほど出てきてしまう建具枠ですが、ドアの枠は極限まで細くすることで存在感を抑え、どこから見ても美しい仕上がりに。金物や引手も小さなタイプを使い、目立たないようにしています。
空間の奥行きを感じさせるツインカーボの建具
次にご紹介するのは、23㎡の賃貸アパートをリノベーションした「一枚板の家Ⅱ」。コンパクトな空間の中で快適に暮らせるような工夫をしました。
こちらの物件では玄関とリビングを仕切る、ツインカーボ(中空ポリカーボネート)の上吊り引き戸を作成しました。木材でできた枠はCNCと呼ばれる機械でのカットを工場で行い、現地で大工さんに組み立てていただきました。建具屋さんに製作していただくよりもコストを抑えつつ、希望通りの寸法の建具をつくれる方法です。
こちらは私たちの事務所のワークスペースです。「一枚板の家Ⅱ」と同じく、建具の枠となる木材は工場でカットをして現場に運び、組み立てた後にツインカーボを貼り付けるのみの作業でした。
どちらの物件も透明性のあるツインカーボを採り入れることで、適度にプライベートを確保しつつ空間の奥行きを感じやすくしました。
レザー製の布を折りたたみ取り付けた建具の引手は、実は竣工時にはなかったものでしたが、使うなかで必要と感じ後から施工。布を折り曲げてビスに挟む簡単な作業で、私たちの事務所ということもあり、自分たちの手で取り付けました。
存在感を極力省いた木製ガラス戸
「野縁の家」は戸建てリノベーションをした物件です。西側以外は建物に囲まれていたことから採光が確保しづらい土地であったため、室内に光を取り込み拡散させる工夫が必要でした。
2階のリビング天井にはポリカーボネート板を採用し、天窓とハイサイド窓を天井裏に設けることで、自然光が降り注ぐ空間に。部屋を仕切る木製ガラス戸は、見付(枠の厚み)と見込(奥行き)を、天井にある野縁材に揃えることで、スタイリッシュな印象に仕上げています。
美しい建具をつくるためには、小さな工夫の積み重ねです。これからも細かい部分のデザインの工夫と使いやすさを追求していきたいと思います。