“KITI”づくり~【アナグマの店舗施工レポート】完成!施工のポイント総まとめ~

前回の記事はこちら「“KITI”づくり~【アナグマの店舗施工レポート】世界観を体現するファサード

3回にわたってお届けしている、学芸大学エリアのナチュラルワイン酒場「アナグマ」の店舗施工レポート。
ついに施工が完了し、店主さんに引渡しができました。
完成後の店内の様子を踏まえながら、今回の設計と施工のポイントをお伝えします。

肩肘張らないカジュアルさと賑わいを伝える工夫で集客につなげる

施工前、店主さんから伺った要望が「肩肘張らずに気軽に入りやすいお店」でした。
店構えが重厚だと敷居が高くなってしまうので、日常的に利用してもらえるよう、カジュアルさを重視しました。

同時に人通りの多い立地であるため、道行く人を呼び込めるようなファサードとインテリアにも注力。
透明なガラスと華奢なスチール框戸によって軽さを出す一方、框戸の押し板やロゴイラスト入りの看板を重く分厚い積層材で仕上げました。

対比する素材の組み合わせで、カジュアルで入りやすい店構えをデザインしました。

また店内の賑わいを外に伝え、雰囲気に惹かれたお客様が入ってくるような工夫も施しています。
扉の縦框の見付けを20mmと小さくし、外から中への視認性も意識したディテールに。

店名の“アナグマ”をデザインにも利用

店名にもなっているアナグマという動物は、地中に巣穴を掘るという性質があります。
そのことから、地中が連想できる意匠として、左官素材のモルタルをファサードに使用しました。

さらにモルタルの腰壁とガラスが、空と地平線のようにひとつの線で切り替わるような表現にすることで、デザイン性を持たせました。

またデザイナーさんが考案したロゴは、巣穴をイメージしたもの。
そのロゴのストーリー性を生かすために、モルタルで作った腰壁の上端にぴったりおさめました。
すると地中にアナグマが巣を掘っている様子を連想できるのです。

店内の工夫

店主さんのワンオペレーションに対応するために、キッチンから店内をすべて見渡せる構成としました。

店内の中心となるハイカウンターは、上からモールテックスを塗ることで、モルタルのファサードとゆるやかにつなげます。

ハイカウンターの端には、一人でも複数人でも囲える丸カウンターを設置。
もちろん、ここもキッチンと視線が通じるようにしています。

ハイカウンターの背後には座面が低く落ち着いたソファー席。
奥にはシーンに応じて壁付けと囲み型を使い分けられる、半楕円形のスタンディングテーブルを造作しました。

このように床と座面との距離や人の向く方向に少しずつ変化を持たせ、小さな空間の中でも気分によって好みの場所を選ぶという楽しみを加えているのです。

無事引渡しができ、竣工祝いをしたのですが…それはまた次回お伝えします。