庭とつながる住まい~上野毛の家~

都内では珍しい、専用庭を備えたマンション1階住戸のリノベーションをご依頼いただきました。既存住戸では和室によって開口の間口が半分に分断されており、庭の存在を十分に活かしきれていませんでした。

そこで、和室の間仕切りを撤去するとともに、ウォークインクローゼットを窓から一間半分セットバックさせることで、庭に面する開口を大きく確保しました。

視線と光が庭へと素直に抜けることで、室内と外部の関係がやわらかくつながり、住戸全体に伸びやかな広がりが生まれています。

庭の気配を感じるヌック

窓際の一角には、小さなヌックを設けました。三方向を壁に囲われ、リビングに向かって開く、静かな居場所です。

庭の気配を感じながら過ごす場所として計画され、母と子が並んで読書を楽しめる空間となっています。

ヌックは木製の台の上にクッションを敷いたベンチ状の構成とし、座面の下には抽斗収納を設けました。クッションを覆う布地は、好みの生地を選べるようにしています。

また、ヌック専用のブラケット照明には可動アームを備え、読書など過ごし方に合わせて光の位置を調整できるようにしました。

光を受け止めるヒッコリーの床

床材にはヒッコリー材を採用しました。窓から差し込む光をやわらかく受け止めながら、力強い木目が空間に穏やかな表情を与えます。

また、1階住戸特有の環境にも配慮し、床裏全体に断熱を施しました。温熱環境を整えることで、1年を通じて快適な室内となっています。

標準仕様を活かした住まいづくり

内装は、事前にコーディネートされた標準仕様をベースとしています。
その上で最小限のカスタマイズを加えることで、住まい手の好みと住戸の環境に合うよう整えました。

大きく作り替えるのではなく、既存の魅力や仕様を活かしながら住まいを調整していくリノベーションのあり方がこの住まいにも表れています。

庭とともに育っていく住まい

専用庭は、これからお施主様自身が手入れを重ねていく予定です。

室内から庭へと視線が抜け、ヌックから庭の気配を感じ、季節とともに景色が変化していく。

上野毛の家は、室内と庭がゆるやかにつながりながら、時間とともに関係を深めていく住まいとなりました。

写真:貝出 翔太郎