坪原木工工場見学記:KITIの建具づくりを支える匠の技

美しいデザインと住みやすさを両立させるKITIの家づくりに欠かせないのが建具の存在です。インテリアに馴染み、さらに機能性も兼ね備える建具づくりを追求するなかで出会ったのが坪原木工という建具屋さんでした。

先日、その坪原木工の工場を見学する機会がありました。今回はその体験をご紹介したいと思います。

自然豊かな環境に佇む秘密基地のような工場

坪原木工は、神奈川県厚木市の山あいに位置しています。KITIの事務所がある東京の学芸大学からは車で約1時間。都会の喧騒を離れ、自然豊かな環境に佇む工場は秘密基地のようでもありました。

正面から見ると一見コンパクトに見える工場ですが、実は奥へ奥へと増築を重ねており、その規模に驚かされます。川沿いに広がる敷地は、先代と現在の社長の2代で少しずつ大きくしているとのことで、坪原木工の歴史と成長を物語っているように感じました。

木の香り漂う”ものづくり”の現場内部

工場内に一歩足を踏み入れると、そこはまさに「ものづくり」を感じる場所。高い天井から吊るされた木くず排出用のダクト、整然と並ぶ大型機械、そして空気中に漂う木の香り。どこを見てもワクワクするような空間でした。

多彩な建具づくりに対応できる豊富な木材ストック

工場内外には、さまざまな種類の木材がストックされています。長さ4mにも及ぶ木材を収納できる大型倉庫も印象的でした。坪原木工では、この豊富な在庫を活かしコストと品質のバランスを考慮しながら、各プロジェクトに最適な木材を選定しているそうです。

KITIでも実際に、木の状態やコストなどを相談しながらそれぞれの物件の建具に使う樹種を決めています。

フラッシュ(扉)の製作過程

坪原木工の製作技術はさまざまなものがあり、今回特に興味深かったのは、フラッシュという種類の扉の製作過程でした。

骨組み作り

フラッシュ扉の制作は、LVL(※)を使って強固な骨組みを作るところから始まります。坪原木工では、LVLの入れ方もいくつものパターンを試し、強度と反りにくさを両立できる方法を編み出したそうです。

※LVL(Laminated Veneer Lumber):スライスした単板を接着してかたまりにした建材のこと

中央部に施された「削り」は空気の通り道となり、湿気やカビ対策になるそう。職人さんの知恵と工夫が詰まっていると感じました。

プレス作業

先ほどの骨組みに表面材を重ね、大型のプレス機で強力に圧着します。接着剤が乾くまで圧力をかけると、扉の完成です。

最新技術の導入

坪原木工では、伝統的な技法だけでなく、最新の技術も積極的に導入されています。例えば、小口テープ貼り機は、切断面を美しく仕上げる専用機。その機械の大きさはもちろん、精密さには目を見張りました。

建具制作の奥深さと魅力を感じる

工場内では、6〜7名の職人さんが作業に励んでいました。そのうち2名が女性だったのも印象的です。ベテランの職人さんが新人さんへ指導する姿を見て、技術の継承にも力を入れていることが伝わってきました。

KITIと坪原木工とのお付き合いは長く、「建具なら坪原木工」という関係を築かせてもらっています。今回の工場見学は、図面だけでは汲み取ることのできない建具制作の奥深さと魅力を改めて感じる機会でした。

これからもデザインの工夫と使いやすさを追求した魅力ある建具を一緒に考えていきたいと思っています。


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