横浜・大倉山の山の中腹に建つマンションの一室のリノベーションをご依頼いただきました。
専有面積約50㎡の住まいの窓の外には山の緑が近くに広がり、室内からも豊かな自然を感じられる環境です。
この住まいでは、その周辺環境を活かしながら、素材の質感と光の広がりを大切に空間を整えました。
緑の気配を取り込む住まい

この部屋の大きな魅力は、窓の外に広がる自然の気配です。
建物は小さな山の中腹に建っており、住戸は景色の開けた方向ではなく山側に向いています。そのため、遠くまで抜ける眺望というよりも、高木の緑が視線の先の近くに感じられる環境です。
周囲には高い建物が少なく、緑の上には空が広がります。近くの緑と空の抜けが重なり、静かで落ち着いた景色が室内に取り込まれます。
室内では、その光をできるだけ廊下側にも取り込むために、建具の高さを天井まで伸ばしたガラス建具を採用しました。空間の奥まで光が回り込み、住まい全体に柔らかな明るさが広がります。
漆喰の壁、絨毯の床がつくる、やわらかな表情

今回の住まいの壁に採用したのは「漆喰(しっくい)」です。
真っ白な塗装とは異なり、わずかな陰影を含んだやわらかな表情が生まれ、光の当たり方によって壁の印象がゆるやかに変化します。
真っ白な塗装とは異なり、わずかな陰影を含んだ表情が生まれ、光の当たり方によって壁の印象がゆるやかに変化します。
床には絨毯を採用しました。毛足の向きによって色の見え方がわずかに変わり、光を受けることで穏やかな陰影が生まれます。漆喰の壁と同じように、時間や光の変化によって空間の表情が少しずつ移ろっていきます。
手仕事ならではの肌理(きめ)や、少しだけ残る凹凸。そして壁に触れたときの質感も、漆喰ならではの魅力です。
均質な仕上げではなくわずかな揺らぎを含むことで、住まいに奥行きを与えています。
シンプルな素材で整えたキッチン

キッチンは、ステンレスの天板と白色のポリランバーの扉を合わせたシンプルなつくりです。
光を受けてわずかに表情を変えるステンレスと、空間に静かに溶け込む白い扉。
異なる素材を組み合わせながらも、主張しすぎない佇まいを目指しました。
装飾を加えるのではなく、素材そのものの質感や光の表情が感じられるような設えとしています。
壁の境界をやわらかくする丸み

室内の壁の角には、わずかな丸みを持たせました。これにより、壁の表と裏の境界がやわらぎ、空間の印象もやさしく整います。
直線だけで構成された空間に比べ、視線の流れが滑らかになり、住まい全体にやわらかな雰囲気を生んでいます。
これからの暮らしに合わせる配線計画

この住まいでは、テレビを固定しない、移動型テレビの導入を想定しています。
そのため、配線計画も特定の位置に依存しないよう柔軟に設計しました。電波の届く範囲を検討し、収納の一部にチューナー置き場を設けています。テレビにも「収納する」「しまう」選択肢を与えることで、部屋の柔軟性を上げています。
子ども部屋や寝室は必要最小限の広さにとどめ、その分、リビングを中心とした開放的な空間を確保しています。
将来的に暮らし方が変わっても、空間の使い方を柔軟に調整できる構成です。
景色と素材がつくる、静かな住まい

数字だけの情報だとコンパクトに見えがちな住まいも、光や素材、景色との関係などを丁寧に計画し整えることで、空間は豊かに広がります。
大倉山の家は、素材の表情と景色がゆるやかに重なり合う、落ち着いた住まいとなりました。