学芸大学駅近くの自然派ワインを扱う飲食店の内装デザイン。

 店主からは、自然派ワインを日常でも気軽に楽しめるようなカジュアルさを求められた。同時に、多くの人通りを望める立地であるため、道行く人を呼び込み集客にも貢献できるファサードとインテリアのデザインを模索した。

 店名にもなっているアナグマという動物は地中に複雑な形状の巣穴を掘るという性質がある。そのことから、地中が連想できる意匠として、ファザードには左官素材のモルタルを選択した。ガラスフレームの見た目の喧騒はモルタルで覆い隠すことで、モルタルの腰壁とガラスが空と地平線のようにひとつの線で切り替わるような表現とした。

 デザイナーにより巣穴をイメージして考案されたロゴは、切り抜き加工した黒皮鉄板を用い、このモルタルの地平線の上端にぴったりとおさめる事で、ロゴと建築のイメージが一体となって店名を連想できる。

 また、店内の賑わいが外に伝わる店となるよう、扉の縦框の見付けを20mmと極力小さくし、外から中への視認性も意識したディテールとした。透明なガラスと華奢なスチール框戸によって軽さを出す一方、框戸の押し板やロゴイラストの入った看板を重く分厚い積層材で仕上げる事で、カジュアルで入りやすい店構えとなるようにした。

 店内は、キッチンと対面ハイカウンターが中心となり、店主が店内すべてを見渡せる構成とすることで、ワンオペレーションに対応している。このハイカウンターは、既存の天板を下地として再利用し、撥水モルタルを上から仕上げ直すことで、ファザードとの連続感のある意匠とした。ハイカウンターの端部には、一人でも複数人でも囲える丸カウンターを設けており、ここもまたキッチンと視線が通ずる。背後には、座面が低く落ち着いたソファー席を、奥には、少人数と複数人のシーンに応じて壁付けや囲み型へと変形可能な半楕円形のスタンディングテーブルを造作した。床と座面との距離や人の向く方向に少しずつ変化を持たせる事で、小さな空間の中に気分によって好みの場所を選ぶという楽しみを加えている。

anaguma

分類:店舗内装

案件分類:設計・施工

主用途:飲食店

構造:鉄骨造

 

延床面積:36.86

写真:貝出 翔太郎