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海外から来る技能実習生用の寮。

元々、本社オフィスだった空間を、8部屋の個室にするリノベーションを行った。

 ーー日本で働く技能実習生が安心できる、そして日本に来て働けてよかった、と思ってもらえるような空間にして欲しい。

施主である社長からの最初のオーダーだ。

このオーダーの背景には、技能実習生の扱いや、土木業の衰退への憂いがある。

昨今の土木業はいくら採用費を投下しても、若者の雇用が難しくなっている。

技能実習生によって何とか支えられている会社が多いというのに、彼らの扱いが酷く、時には逃亡するケースもあるというのだ。

ーーこのままだと、会社はもとより業界全体が衰退し、行き着く先は、国内の最低限のインフラを支えることすらできなくなる時代がくる。

社長はそんな懸念を強く感じているという。

未来をなんとか変えていくための、ひとつのきっかけになるような空間にしてほしいと、強いオーダーを受けた。

 リノベーションをする物件は、30年近く事務所として使っていた、ただのワンフロア。

満たされた住環境にするには「部屋に彩光が取れている」「空調が整っている」「一人ひとりのプライバシーが確保されている」最低でもこの3つの要素が必要となる。

と同時に、日本に来てよかったと思ってもらえる環境作りが必要だ。

技能実習生が生活をともにする中で、コミュニケーションを円滑にできる環境をテーマに空間を作った。

 エントランスから入ると、みんなが自由に使える廊下兼大広間が広がる。

そこには社長のオーダーで、共有のベンチ付き本棚を設置し、今いるメンバーとその後入社するメンバーの、今と未来を繋ぐ共有図書スペースを作った。

そこから各部屋に入ると、各部屋毎にクローゼット・セキュリティーボックス・部屋の鍵・ベッド・冷蔵庫と、設備が整う。

そして、社長の日本に来たら勉強して欲しいという強い希望により、各部屋に作り付けのデスクスペースをもうけた。

この空間が完成したことで、日本で働き、そして学ぶ環境が整った。

箱としての機能だけでなく、日本と世界を繋ぎ、今と未来を繋ぐ大切な空間へと変貌をとげたのだ。

中野区白鷺の寮

分類:リノベーション

案件分類:設計・施工

主用途:寮

構造:鉄骨造

延床面積:82