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KITIの新事務所計画。鉄骨造のマンションの21㎡の小さな空間に、パートを含むメンバー6人が仕事をするための空間を作った。

 旧事務所は気に入っていたが、オーナーであるKITI伊藤の両親の新しい住まいとして明け渡すこととなったので、次なる事務所拡大の期までのおよそ2年間を過ごす一時的な仕事場としての「基地」をつくることになった。旧事務所と同じマンションの3階の空いた一室を事務所として改装した。一時的な居場所なので、ローコストで簡易的・仮説的なつくりだが、アジトのような荒々しさとワクワクを感じる、そんな空間をめざした。

窓辺の一番明るい空間にお客様を招く打ち合わせ室を配置し、玄関から奥の打ち合わせ室までの経路に一文字に長いデスクを配置し、各自のワークスペースとした。デスクの壁は斜線制限により斜めに立ち上がっているので、21㎡を効率よく活用するには、頭上が斜めにさがるこの場所を座って過ごす空間にすることが最善である。デスクの背後の通路幅は、お客様ともすれ違える最小寸法900㎜とし、残った735㎜をデスクの奥行きとした。この奥行きは作業スペースとしては十分な広さだが、その足元は斜めによりさらに奥行きがあるので、足を延ばし放題で気持ちがいい。

 裏であるトイレ、手洗いシンク、冷蔵庫、クロークはすべて最小寸法で設計し、ボリュームの大きいレーザー複合機はクロークに収めた。これら各裏の個室とワークスペースの間と、打ち合わせ室とワークスペースの間には、仕切れるように引戸を走らせた。引戸とその並びの間仕切り壁の表面には、光の透過性のあるツインカーボ(中空ポリカーボネート)を使用し、窓や照明の光を狭い玄関側まで届けられるような仕組みにした。建具の作りもビス止めのみの簡易的な制作方法をとり、大工工事だけで完結するように工夫している。

 外周壁と天井の仕上げはコストのかからないように、既存クロスの上からの塗装とした。スタッフのDIY塗装である。ここでも光を部屋の奥まで配ることを意識し、色は白でなくあえてシルバーを選んだ。ワークスペースの周辺の壁や家具はラワン仕上げとした、荒っぽさがありつつも、木目の温かみや表情を楽しめ、シルバーとの相性も悪くない。床は土足にするため、樹脂モルタルを左官したが、こちらもスタッフDIY。スタッフが自分で手を動かすことで、工程や素材の癖や職人の気持ちを理解するという教育プロジェクトも兼ねている。また、ここはお客様が打ち合わせ時に住まいづくりの検討をする場所でもあるから、ツインカーボや木毛セメント板などの普通の家ではみないような個性のあるマテリアルを散りばめたり、ところどころで、下地や配線が露出にして、壁の中身が説明できるようになっていたりする。

結果出来上がったこの空間はシルバーと新素材で囲まれて宇宙船のような世界観がある。

この世界観に加えて、1階の旧事務所から3階に上がっていく上昇感と、ここがKITIの成長のための一時的な拠点であるという性質から、我々はこの場所を宇宙基地「UCHU-KITI」と名付けた。

UCHU-KITI

分類:リノベーション

案件分類:設計・施工

主用途:事務所

構造:鉄骨造

 

延床面積:21

写真:貝出 翔太郎