建築士が描くキッチン空間4つのアプローチ

住宅設計において、キッチンはとりわけ重要度の高い場所のひとつ。効率性や機能性が求められるのと同時に、意匠性も大切にしたい場所です。

リノベーションでは単に新しいシステムキッチンに交換するのみでなく、既存のキッチンを流用しながらデザインをアップデートしたり、造作家具と組み合わせたりと、無限の選択肢があります。

どのようにキッチンを作っていくと最大の価値を生むのか、ワクワクする空間になるのか。今回はKITIが手がけたキッチンの事例をご紹介しながら、いくつかのプランのバリエーションをお伝えしたいと思います。

case#01 既存のキッチンを活かしたリノベーション

こちらのお住まいは、リノベーション済物件をご購入され、さらに自分好みの空間へアップデートさせるプロジェクトでした。

既存のキッチンの性能は問題がなかったためそのまま使い、見た目のみをテイストに合わせてリノベーションすることに。前板を外して新しいものに替え、さらに腰壁を付けました。

case#02 扉の変更で新旧のバランスが取れたキッチンへ

こちらも既存のキッチンやカップボードをそのまま使用した事例です。吊戸棚やカップボードの扉を変え、大きな作業台を造作することで、リノベーション後のリビングと馴染むように仕上げました。

こちらがリノベーション前の住まいです。

お祖母様から受け継いだ住まいということで、昔の面影も残しながらモダンな空間へ。何もかも新しくするのではなく、残す部分・変える部分のメリハリをつけることで、コストを抑えながら快適で愛着のある空間が実現できます。

目黒区中央町の住宅

case#03 大きな一枚板で造作した人が集まるキッチン

一方、こちらはキッチン全体を丸ごと造作したお住まい。23㎡ワンルームに生活に必要な機能を集約するため、居住空間の中央に大きな一枚板を配置し、キッチンと洗面スペースを造作しました。この大きな板の上で食事や仕事をしたり、コーヒーを飲みながら読書をしたり……さまざまな生活の動作を受け入れられる空間となっています。

一枚板の表面に施工したのは、モールテックスという左官材。薄塗りでコンクリートのような強度が出て、防水性にも優れているのでキッチンの天板にも安心して使える素材です。下部のキャビネットにはグレーの塗装を施し、全体的に違和感がないように仕上げました。

造作のコスト面の問題は、使用する素材を選ぶことで解決できます。こちらのプロジェクトでは、造作家具に合板を使い、建具は既製品にすることで、コストとデザイン性のバランスを取りました。

一枚板の家Ⅰ

case#04 既製品と造作家具を組み合わせたキッチン

最後にご紹介するのは、既製品と造作を組み合わせた事例です。キッチンを造作するとコストがかかるため、既製品のステンレスキッチンを採用。背面には人工大理石を天板に使用したアイランド型調理台兼カップボードを造作しました。

このあと並べるダイニングテーブルの奥行きと揃えて調理台を造作したので、調理台とテーブルを合わせると合計3m超に。調理だけではなく、仕事や打ち合わせなど、いろいろな用途をカバーできます。

他の造作家具と色合いやデザインを揃えて製作することで、統一感のある空間づくりをしたのもポイントです。

細長い空間を味方につける – 築50年の集合住宅が蘇りました